油彩画制作過程

 

最初の作例では、市販のキャンバスに2日間で描く場合を設定しました。

キャンバスの大きさはF15号、制作時間は6時間とします。

 

左のようなモチーフを組みました。牛骨が中心となりますが、モチーフが置かれている台と、牛骨が乗っているブロックのそれぞれの水平面の関係を意識しながら構図を決めます。全体がバランスよく画面に入るように、最初にスケッチすることをお勧めします。

開始30分程度の段階です。木炭などで形をしっかりとってから絵具をつけてゆくやり方もありますが、今回は短時間で仕上げるので、直接油絵具で描いてゆきます。溶き油にパンドルを使い、絵具をキャンバスにこすりこむように描いていきます。こうすると絵具が早く粘りをもってくるので、あとからのせる絵具層が定着しやすくなります。

1時間が経過しました。ベースになる色を何色か作って、大まかにのせた段階です。このとき、意識的に対象と違う色を使ってもかまいませんが、作例では、制作時間を考えて素直に固有色を塗りました。溶き油は使わずに絵具をしっかりとキャンバスに乗せる感覚で塗っていきます。白は最もよく使う絵具ですからメデューム(乾燥剤)をあらかじめ混ぜておくとよいでしょう。

これはパンドルで薄く溶いた絵具を、刷毛を使って勢いよく塗った状態です。

モチーフ同士を繋ぐ刷毛あとや垂れた絵具が、かたちとかたちに緊密な関係を持たせ、空間に深みを出していきます。このように絵具の扱い方に幅を持たせていくためには、筆の種類と数が必要です。硬いもの、柔らかいもの、刷毛や極細の面相筆などいろいろ揃えていきましょう。

3時間が経過しました。モチーフひとつひとつのかたちを確認しながら描き進めていきます。牛骨が乗っているブロックは布で隠れている部分が多いので注意が必要です。牛骨はプロポーションが狂わないように、瓶やグラスは左右対称性や楕円の丸みに気をつけます。牛骨と壁に絵具を意識的に厚く塗って、1日目の制作を終了します。

前の日に塗った絵具が乾いているので、最初は薄く絵具を重ねていきます。

厚塗りされた上から薄い絵具層が重なることで、色の厚みと深さが出てきます。

さらにその上に絵具を置いたり、刷り込んだり、ペインティングナイフで削ったりして、モチーフにふさわしい色味と質感を探っていきましょう。細かい表情もしっかりと描きこんでいきます。

細部にこだわっていくと、視野が狭まってしまうので、全体の統一感を絶えず気にかけながら描くことが大切です。特に仕上げにかかった段階では、描くことよりも見ることが重要かもしれません。ちょっとした形の狂いも見落とさないようにしましょう。この段階では大きな修正はできませんが、細かい単位で形や色合いの調節をしてください。6時間で、完成としました。

部分を拡大した画像です。ほうずきの独特のふくらみを捉えた上で、表面の乾いた感じやチリチリとした細かいラインを面相筆で丹念に描きこんでいます。布の表面はそれほど細かい描写は施していませんが、水平面と垂直面の関係を意識しています。布の青い色合いをほうずきの陰部分に反射させることで、両者の緊密なかかわりが強まります。

別の部分画像です。それぞれのモチーフが落としている影の表現を参考にしてください。影を丁寧に扱うことで、ものの存在感がよりはっきりしてきます。

ものが台にしっかりと乗っているか、すこし浮いているかで、影の在りかたが違ってきます。また、影の色は黒ではありません。モチーフの色とのかかわりを考えながら色の差、幅を出していきましょう。

細部を描いていく手順も大切です。モチーフを見るとき、つい手前を中心に見てしまいます。手前のものも奥のものも、常に対応させながら見ていくことが大切です。手前を描きこむために、奥側のものをまず描きこまなければいけない場合もあります。この画像では、手前の唐辛子とグラスを描く前に、牛骨を完成させておきました。