石膏デッサン 【把握と表現】
※『ガッタメラータ』と『ラボルド』は画像をクリックすると拡大表示画面があります。

●胸像『ガッタメラータ』
素材−鉛筆  用紙−木炭紙判画用紙  制作経過時間−2.5時間

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見える各部の明度差をそのまんま正しく描かない?
上の作例と比較すると、実物の石膏像は肩から腋にかけての断面がもっと 明るく
見える。後頭部は逆に実物の方が暗く見える。途中とはいえ、顔面と胸部の明度
差は実際にはそれほどない。石膏像の台はやはり白く、形はもっと鮮明に見える。
実際に見える石膏像の明度とデッサンのそれとでは随分違う。人の眼はまわりの
暗さや明るさに慣れ(明暗順応)、物を的確に捉える能力を持つ。しかし、その能力
も文脈(全体)に照らし合わせて活かすことが必要でしょう。  
            

●首像『ラボルド』 
素材−鉛筆 用紙−木炭紙判画用紙 制作経過1.5時間


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ぼんやりと見て、ボリュームにピントを合わせる?
ピントを合わすということは、眼でもカメラでも物の一点に視線を集中させその部分
がはっきりと見えるようにすることを言う。その意味では、ぼんやり見るとピントは合
わないのだが、あえて細部にこだわらず物全体を見渡すようにし、その上で、物の
塊としての形態や量、ボリュームに意識の焦点(ピント)を合わせる。人は絵を描く時、
稜線追跡(輪郭追い)モードに陥り平面的になり易い。立体的に表現するにはボリュ
ームを想ってぼんやり描くのも面白い。    
                      

 ●胸像『パジャント』 
素材−鉛筆 用紙−木炭紙判画用紙 制作経過3時間


物は立体だが絵は平面。だから輪郭の出番もある?
紙面に残された鉛筆の線は、それを見る者にいろいろなイメージを与える。かりに
「○」が描かれていたら、輪か、平面図形の円か、立体的な球か、判断の可能性
がたくさんある。例えば力士のお腹を1本の曲線で表す場合、腹部の張った膨らみ
をイメージして引くと紙上では単なる曲線が、上手くいけばお腹のボリュームを彷彿
させられるかもしれない。実物に輪郭は無いけど、それは三次元でのこと。絵では、
輪郭を利用して立体感をイメージさせることも多い。 
                  

 ●胸像『ブルータス』 
素材−鉛筆 用紙−木炭紙判画用紙 制作経過1時間


相互の位置を見る?空気の層を見る?気配も見る?
位置は計測するもの、空気は通常眼には見えないもの、ましてや気配は直観的に
察するものであって果たして見ることが出来るのだろうか?デッサンの体験を重ねる
と、日常空間の中に突然距離が謎めいてリアルに見える事態に遭遇する。そこに物
が在るという当然の状況が、まるで空気の塊を押しのけて立っている奇跡とでも言え
そうな驚きを与えることがある。奥に対して手前、張り出した面と退く面、圧迫された
空間と抜けた間、対比させることで見えてくる。

dessin&comment■Kawano

 

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