●制作プロセス 木炭・石膏デッサン 『パジャント』
素材−木炭、鉛筆  用紙−MBM木炭紙  制作時間−9時間
130分経過

木炭は芯を抜いた上で鋭く斜めに削っておく。そうすると、断面(腹側)
で広い面、エッジでシャープな線、先端部で細部が表現できます。
次に、イーゼルと椅子の位置を決めたら、身体を画面に向けるの
ではなく石膏に向け、見る方に重点を置くようにします。そうして
石膏像全体を見渡し、木炭紙への納め方を検討し、方針が決まっ
たら基準となるポイントを探す。作例では、向かって左の目尻と髪
の間が画面の左右の中央に該当します。描きはじめは、それを
手がかりに、石膏の各部要所のおおよその位置を、画面の縦横と
照らし合わせてしるしをつけ、ゆったりと木炭を着けている。

2 1時間経過

木炭は黒さが着けやすく、取れやすい。その特徴の長所を見れば、
木炭は簡単に濃淡の差が表現できることと、形を修正するのに適
した素材となります。石膏像の印象を似せようとして似ないのは
作者の不注意が原因と言えますが、結局の所、見方と捉え方の
狭さと少なさが要因と言えます。石膏像全体の形態は部分のつ
なぎ合わせではなく、すべてが他とのバランスで成り立っている
と考えることが大切です。そこで、見たままの形をすぐに決めるの
ではなく、木炭の長所を活かし、背景と石膏の濃淡の配分を利用
したり、各部の位置を絶えず他との関係で仮置きしながら進めます。

3 4時間経過

おおよその形と明度差を表すことと前後して、木炭は単に用紙に
着けるだけではなく、いろいろな技法の活用が必要となります。
木炭は用紙に着けるだけでは簡単に取れて落ちてしまう。そこで、
手(主に指先)で押さえたり擦ったりしながら紙に強く定着しなけ
ればならない。木炭デッサンは、木炭を用紙に乗せては押さえる
行為を繰り返しながら、作り出す調子の幅を利用しながら石膏像
の立体感とそれを取り巻く空間を表現すると言ってもよいでしょう。
時には、練りゴム、布、擦筆なども使い、明るい部分や薄ぼんや
りとした流れ、反射光のあたる面などを描き表していきます。

4 6時間経過 完成

木炭を指先で定着する行為は、さながらデッサンの中で石膏の
表面を実際に触れているような感覚を呼び起こす。木炭の乗せ
る量と押さえる加減で徐々に石膏が存在することの現実味を表し
て行きましょう。ところで、作者自身は自分の作品を評価すること
が案外と難しい。作例でも、制作途中に他人の意見を聞き、何度
も形の修正を行っている。デッサンは作者が考え、検討し、工夫し
た量が痕跡として残り、能力以上の結果は容易には出ないものです。
悪戦苦闘の中で試みた手が次回作への足がかりとなります。

dessin&comment■Kawano

●上記制作過程DVD(約1.5時間.簡易編集.音声無し)を2,200円(送料・消費税込み)でお届けします。
 ご希望の場合は <お問い合わせ窓口> をご利用下さい。

<<< 戻る ↑↑↑