M.M. ( 山口県光高校卒−東京芸大日本画/金沢美術工芸大学日本画/愛知県立芸術大学日本画合格 )


●鉛筆・石膏『ジョルジョ』 M版画用紙・14h


●静物写生 水彩・M判画用紙・9h

社会人生活を経て一念発起。アルバイトをしつつシードで2年間学ぶ。金沢美工大と愛知県立芸大にも合格。鉛筆のタッチを指先で画用紙に強く圧着し、陰側に射す微光をネリゴムで抜き取って表し、面を具体化する。

的確にプロポーションを捉え、微妙なモデルの動きを察知し若々しい表情を爽やかに描き出した作品。衣服の白は人体やキャラクターとの対比を考慮し、極力濃色を抑え、用紙の白との微妙な差を見て描いている。                             
 
T.H. ( 広島城北高校卒−東京芸大日本画/金沢美術工芸大学日本画合格 )


●鉛筆・石膏『聖ヨセフ』 M版画用紙・12h 


●静物写生 水彩・M判画用紙・12h

描き出しのタッチは実におおらか。中盤ものびのびと描き進める。それでいてぐいぐいと形態が現れ、ほぼ完成しているように見えるが、終盤が作者の真骨頂で、コツコツと積み上げたタッチが一気に密度を増す。 

背景と白い布の台面は、モチーフの影を除いて着色されていない。それでいて余白が空間に、手前の台は水平な面として見える。モチーフの色は、用紙の色を考慮し画面空間と共に見ることを、作者は心得ている。 
 
H.H. ( 賀茂高校卒−金沢美工大油画合格 )


●鉛筆・人物 M版画用紙・12h


●人物写生 油彩・F15キャンバス・6h

ノイズ。粒子。シミのような痕跡。ふるえる線。擦り込んだ黒。モデルの
動きを微妙に誇張して造形上のバランスを取る。何処まで本当なのか
よく判らないのだが、これが作者が見たモデルの本当の姿なのだろう。 

絵の具は画布に塗られ、引き伸ばされ、かすれ、傷つけられ、その色と共
に 絵肌となって効果を表す。大胆に赤を基調とし、モデルの肌はその赤
の影響と形態の持つ色の相互作用を計測しつつ、生み出されている。
 
K.F. ( 安田女子高校卒−金沢美工大油画合格 )


●木炭・石膏『アポロ』 木炭紙・12h



●人物写生 油彩・F15キャンバス・10h

壁に掛かった布や、かすかに見える天井まで、画面の隅々まで手を抜か
ず、眼に入るものは全て用紙に留める。そんな真摯な姿勢が強く現れた
作品であり、当然の帰結として、いつしか画面構成力も獲得していった。   

入試直前に志望校の出題傾向に沿って描いた作品。作者はそれまで画
面構成に苦心していたが、この作品は人物とモチーフを大胆に交錯さ
せ、軽快な筆遣いによって、リズミカルな色の配置を創りだしている。
 
N.O. ( 三原東高校卒−愛知県立芸大油画合格 )


●木炭・石膏『ガッタメラータ』 木炭紙・12h


●人物写生 油彩・F15キャンバス/9h

人はそれぞれ独自な線を引く。恐らくそれは深い根っこのところで、個々の人間のリズムとでもいうものが左右しているからだろう。対象を捉え、くねるような跡となる作者特有の線が、いきいきと石膏像を活写。 

大まかに分割された背景の形と色は、人物表現との連携から導かれている。まず最初に、キャンバス上に自分の色彩感覚を頼りに数種の色を塗り、気に入った色の分布をみてそれを手がかりに制作を進めている。
 
E.N. ( 安古市高校卒−広島市立大油絵合格 )


●木炭・静物「石膏人頭骨、牛骨」 木炭紙・12h


●構成表現 油彩・F15キャンバス・12h

眩いほどの白さを感じさせる手前の石膏。それに引き替え、妖気漂う空間の黒。物質的には紙と炭の合体に過ぎないが、作者の執拗な描くという行為の果てに、眼の前の現実とは異質な世界が創り出されている。

モチーフと自画像が組み合わさった作者の心象風景。鬱蒼たる暗く沈んだ空間が設定され、そこに微かな光明が射し、青白く浮かび自ら発光しているかのように描かれた顔が、妖気の漂う独自な世界を表現している。
 
T.M. ( 安佐北高校卒−広島市立大油絵/名古屋芸術大学洋画合格 )


●木炭・石膏『ブルータス』 木炭紙・12h


●静物写生 油彩・F15キャンバス・12h

休むことなく、倦むことなく、席に着いたら一日中制作に没頭していた。そんな中で、石膏像のボリューム感が一気に現れた記念碑的作品。受験時代の作者は、いつも使命感に燃えて制作に励んでいたように思える。 

複雑に絡み合ったモチーフを、周囲にある物も取り込み、臆せずストレートに描くことで絵画世界を成立させている。実際に見える色をベースにして、作者は澄んだ空気の層を重ねて、物の表面色を探し出している。
 
T.M. ( 鈴峯女子高校卒−広島市立大学油絵/日大芸術学部絵画合格 )


●木炭・石膏『ファウンのトルソ』 木炭紙・12h


●静物写生 油彩・F15キャンバス・12h

間近で見ると巨大さに圧倒されるボリュ−ム感を、優しく包むように描き表している。刻一刻と推移する石膏の表面をゆっくりと眼でなぞり、木炭による絶妙なハーフトーンで描き出し、明るい面にも抵抗感を作る。 

主役の牛骨に見る者を引きつけながら、全体として不思議な浮遊感を漂わせている。背景に置いた青、台上の緑、レモンの黄色、毛糸の赤といった強い色彩が破綻することなく心地よく響き、画面を引き締めている。
 
A.H. ( 広島城北高校卒−東京芸大デザイン合格 )


●鉛筆・石膏『パジャント』 M版画用紙・12h


●平面構成(部分) モチーフ(水仙、キウイ、アスパラ)・B3画用紙・9h

作者は他にも像を取り巻く気配に重点を置いた作品や、浴びる光の表情を利用した作品など、いろいろな作風を実験的に試みていたが、これは像の表面を整然とつなぎ合わせ、隙間なく埋め尽くして造形された作品。 

横長の作品中央部をトリミング。形の描写には明度差の再現に頼ることが多いけれど、可憐な花を色で描く場合は、色相と彩度の変化に注意をはらい、なるべく明度差に頼らないのが花らしく描くコツだといえる。
 
K.M. ( N.D.清心高校卒−東京芸大先端芸術表現合格 )


●鉛筆・石膏『円盤投げ』 M版画用紙・12h


●静物写生 水彩・M版画用紙・9h

高2の春から在籍。幼い表情に誠実な描写姿勢。いつしかどっしりとした風格がデッサンに現れ、工芸科の実技試験で一発合格。像から受ける印象は人によって多少の差はあり得るが、彼女の絵には奇異な癖が無い。

下地材のジェッソを用いて用紙上に凹凸を作り、水彩絵具の定着差を利用してマチェールを活かす。筆あととは異なった色の痕跡が抵抗感を生じさせ、モチーフ固有の色を彩度高く見立てた扱いと巧みに響いている。
 
T.T. ( 廿日市高校卒−広島市立大デザイン工芸合格 )


●鉛筆・石膏『マルス』 M版画用紙・12h


●平面構成 モチーフ(鯛、プルーン、葉、紙フィルター)・B3画用紙・6.5h

頭部と胴部のボリューム差を把握し、各面の方向の差を読み、それらの明度差を感知し、明部はタッチに制御を効かせ、暗部は惜しみなく黒を載せる。明確な完成イメージに向けて、一手一手が無駄なく進んで行く。 

モチーフの配置を形の大小・方向・位置などを手掛かりにして練り、モチーフ固有の色を相互に響かせ、よりいっそう美しく見えるよう巧妙に仕掛けられた作品。プルーンの簡略化された色にも不自然さが無い。
 
Y.S. ( 安古市高校卒−広島市立大デザイン工芸/福山市立女子短期大学/広島文教女子大学合格 )


●鉛筆・静物「発砲ケース、紙、テープ」 M版画用紙・6h


●平面構成 モチーフ(菜の花、スターチス、猫柳)・B3画用紙・6h

線の美しさとシャープさは群を抜いていた。発泡スチロールと両翼の画用紙は共に白で、メタリックテープは周辺の色を映す。固有色の差の少ないモチーフを的確な線使いで表し、陰影表現には仄かな調子も効かす。 

用紙を空間に見立て、そのなかに主役の花を際立たせる。写実的デッサンと同じ設定でありながら、遠景をこの作品のようにさりげない色で置くのは案外と難しい。白地は余白でなく何度も白が重ねられている。
 
M.M. ( 比治山女子高校卒−武蔵野美大工芸工業デザイン/広島市立大学デザイン工芸合格 )


●鉛筆・静物「紙風船他」 M版画用紙・9h


●平面構成 モチーフ(風車、炭、枇杷)・M版画用紙・9h

室内の蛍光灯の下、ほのかに浮かび上がるそれぞれのモチーフの色と質の差が、表情豊かなタッチの差を用いて描写されている。完成からは思いもよらないが、描きはじめはB系鉛筆で強く大胆に手を打つタイプ。 

炭の色は黒と言えるが絵具の黒と等色ではない。まして、立体として表現するには各面の方向を見極め、刻一刻と変化する色味を判断しなければならない。大胆でおおらかな作者の作風が遺憾なく発揮された作品。
 
S.I. ( N.D.清心高校卒−多摩美大グラフィックデザイン/武蔵野美大視覚伝達デザイン合格 )


●鉛筆・石膏『円盤投げ、角材』 M版画用紙・12h


●平面構成 イメージ『エンサイクロペディア』・B3ケント紙・9h

目の前の事物を客観的に捉える能力が非常に高く、描写に際しても鉛筆の調子を論理的に重ねて行く。但し、作者には真面目におどける性格もあり、その振幅の広さが、事にあたっての戦略の多さを可能にしている。

エンサイクロペディアとは百科事典。描かれているのは本の虫である。頁の隙間を作者考案のキャラが表情豊かに往来する。虫の立体表現はグラデーションにより、それは虫以外の物と様式の調和を図るため。
 
Y.W. ( 廿日市高校卒−京都精華大VCD合格 )


●鉛筆・静物「兎人形、市松布他」 M版画用紙・12h


●平面構成 イメージ『私たちの記憶』 B3画用紙・5h

それぞれのモチーフの位置関係が薄淡い空気の層を設定して表現されている。とりたてて強く形態を主張させることもなく、また、タッチで質を際立たせている訳でもないが、均整のとれた素直な世界となっている。 

「記憶」の図や形があるわけではない。作者は指先の爪を時間の堆積として象徴化し、それを課題に対する自分が採ったテーマとし、その大きな爪の中に典型的な物達を抑制された色使いで表している。
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